2013年11月9日土曜日

展示を終えて




 路地と人での展示から伊豆へ帰ってくると、ケヤキの落ち葉がピークを迎えていました。来年の釉薬原料ですから休む間もなくせっせと毎日落ち葉焚き。ついでに放り込んで作る焼き芋がホクホク美味しくて疲れも次第に取れてきました。





  たくさんの方に来ていただいた初めての展示。こんなに恵まれた形で始めの一歩を踏み出せたことは幸運でした。




 まだ未熟で頼りない器たちは古本や絵に囲まれて心強い仲間を得たようにそこに並んでいました。





  巣立っていった器たちがそれぞれの場所で楽しい風景を作り出していることを心から願うばかりです。




 この数ヶ月は展示に向けてひたすら作品を仕上げることだけに集中してきたので、またしばらくは轆轤の練習に加え、いろいろ試してみたいことを実験しながらmoggy potteryの器を追求していきたいと思っています。まだまだ私は出来ないことの方が多いのです。ひとつひとつ克服して納得いくものが作れるように日々を積み重ねていく。今私がするべきはそれだけです。


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お知らせが遅れてしまいましたが、11/10(日)に美学校のイベントで、古本屋(仮)さんが引き続き器を販売してくれるそうで、少しですが象嵌の器を置いてきました。
終了しました。ありがとうございました。
【11/10 美学校 イベント】「神保町冬支度」   


日 程:2013年11月10日(日)
時 間:12:00〜16:00
料 金:入場無料(物販あり)
会 場:美学校 本校(地図)東京都千代田区神田神保町2-20 第二富士ビル3F
主 催:美学校 × yoms × TANA Gallery Bookshelf
協 力:LITTLE EXPO

http://kanda-tat.com/jinbocho-fuyujitaku

http://caccokari.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html
 

 

 
 
 

2013年10月31日木曜日

ともすればただ流れ過ぎていくだけの

 今回の展示を企画してくれた古本屋(仮)さんが発行しているフリーペーパー「Yoms」で、先日私の特集をしていただきました。セブンイレブンのネットプリントで限定配信というもので、発行期限を過ぎたので、特集記事の文をご紹介します。文章を寄せてくださったのは、ギャラリストの棚さんで、最初に器を買っていただいた記念すべきお客様です。売るということなどまだ微塵も考えていない時期に買っていただいて戸惑いもあったのですが、お金を払っていただくに値する器を作る責任ということをしっかり考え、真剣に器と向き合うきっかけとなりました。もしあのとき棚さんに買っていただかなかったら、私はまだのほほんと練習だけをしていたことでしょう。

 

*****************「Yoms」特集:器について。より


  古本や出版の街として知られる東京・神田の神保町は実はなかなか騒々しいところで、早朝から夜中まで街角から人の姿が消えることはなく、道を行き交う人々の移ろいからはそれぞれの暮らしが少しずつずれながら重なり合っているのを感じられるでしょう。地下鉄の駅から地上に出てすぐの神保町交差点は、信号待ちの人と車をほんの少しだけ足止めしながら、ともすればただ流れ過ぎていくだけのせわしげな往来に、寄せては返すにわかなざわめきの波をさりげなく与えています。

   そんな賑わしい交差点からほんの1、2分、大通りに面したビルの裏側に一歩入ったところに「路地と人」という場所があります。昼も薄暗く、夜には闇の深い、古びたコンクリートやモルタルの一面くすんだ灰色の風景のなか、舗装の隙間からすくすくと伸びた雑草の小さな自然に思わず気を取られると、そのすぐ隣に置かれた「路地と人」の看板と小さな入口が見つかるでしょう。築40年を越える小さな木造アパートのわずかな軋む階段をそろそろと上りきるころには、すぐそこの交差点の喧騒はすっかり遠のいているはずです。右手の扉をくぐれば、そこが目的の場所です。

   この静かな路地裏の4.5坪ほどの空間は、2010年の1月から「人の行き来する部屋」として様々なできごとを目の当たりにしてきました。ここで2013年10月29日から11月4日に行われるのが、実店舗のない古書店の古本屋(仮)と画家の齋藤祐平さんの二人の物販ユニット「yoms」による「yomstore」という催しです。古本屋(仮)を営んでいるのは齋藤祐平さんの奥さんの末度加さんですが、そこに末度加さんの叔母である陶芸家の福田サイノさんを加えた三人が、この度は古本と絵と器の展示と販売を行うそうです。

   古本屋(仮)と齋藤祐平さんの様々な活動はすでに広く知られていますが、ほとんどの人にとっては福田サイノさんを知るのは今回が初めてでしょう。劇団女優、カフェ経営者、キャスターとして活躍してきたサイノさんは、2007年に陶芸に出会い、自宅の庭にアトリエ「moggy pottery」をなんと自分の手で作ってしまいます。昔ながらの蹴ろくろで造られた器は、庭の樹齢百年を越すケヤキの落ち葉を燃やした灰を材料にした釉薬で仕上げられます。ろくろの回転も釉薬の色味もその時々の偶然に左右され、まったく同じものは決してできあがりません。だからこそひとつひとつに控えめながらも豊かな趣があるのでしょう。

   それを、複製でありながら人の手を渡るうちに個性を深めていく古本や、同じようなモチーフを繰り返し描きながら何一つ同じものはない齋藤祐平の絵画に、どこかしら通ずるものがあると思うのは考えすぎでしょうか?いずれにせよ、この催しをきっかけにmoggy potteryの器がより多くの人に触れられることになるのはとても嬉しいことです。形も重みも大きさもほんの少しずつ違う器の中には、まるで長年使い続けてきたかのように手にしっくりと馴染むものがあるでしょう。もしそんな巡りあわせがあったならば、その直感に従うのも一興ではないでしょうか。 

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 文: 棚さん(ギャラリスト)
  2010年10月10日より東京・神田の神保町にある美学校の中で本棚一段のギャラリー「TANA Gallery Bookshelf」を運営。齋藤夫婦を訪ねたときにmoggy potteryの小さなカップに一目惚れし、散々だだをこね、その日のうちに譲って貰ったのはたしか去年の今頃のこと。

http://tanagallerybookshelf.com/


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 「Yoms」のバックナンバーはツイッターのリクエストで受け付けているそうです。  

@cacco_kari  

 yoms5 yomstoreにむけての特集号  
 2013/10/14












特集:moggypottery福田サイノ 
表裏紙デザイン: 齋藤祐平  
寄稿:棚さん「器について」 
マンガ:タコ25 

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終了しました。ありがとうございました。
開催中!「yomstore
  古本屋(仮)による古本、齋藤祐平による絵、福田サイノによる器の展示販売。

  会場:路地と人(http://rojitohito.exblog.jp/
  会期:10/29(火)~11/4(月・祝)
  開場時間:平日…1922時、土日祝…1420 
 *作家在廊 11/2,3,4  
 

2013年10月30日水曜日

嵌めるつもりが嵌められた象嵌の魅力

 象嵌の器は印花などでくぼみを作り、そこに化粧土を埋め込む技法です。 象嵌の中でも、化粧土を刷毛で塗って軽く表面を布で拭き落とし、ベールの向こうに模様が透けて見えるような三島手の器などはよく見かけるものの、表面を削り落として模様をくっきりと浮き上がらせる象嵌は、高価な美術品や工芸品を別にすれば安価な雑器ではあまり見かけません。おそらく手間と時間がかかるため、雑器として出すには不向きだからでしょう。  

 私もそれはわかっているのですが、埋め込んだ模様には描く模様とは違った魅力があり、すっかり嵌ってしまったのです。土を嵌めてるつもりが、嵌っているのは自分だったというわけです。模様をコツコツ凹ませて作っていき、そこに化粧土を埋め、乾いたらまた埋め、これを十分に盛り上がるまで繰り返し、程よい乾燥具合を見計らって削っていきます。やっていると目はショボショボ、肩は凝り、指にはタコができてくる始末ですが、削りだしたときに模様がパキッと浮き出る瞬間、あぁ、くぁわいい~と萌える自分を抑えられません。哀れなことです。




















今回、作った象嵌模様は4種類です。

             クロス柄  

             チビクロス柄

             ラインドット柄  

             ツララ柄



 写真の棚の上段はフリーカップで、ヨーグルトやジャム、アイスクリームなどにピッタリです。また小鉢としても、蕎麦猪口としても使える用途の広い器です。 下段はコップ。ハンドルのついていないシンプルなコップ型の陶器は、これまたオールマイティ。 ジュースや水、お酒、コーヒー、お茶、なんでもいけると思います。 この他にマグカップ、コーヒーカップ、ティーカップ、皿など、象嵌シリーズ色々に加え、粉引の器も出品しています。  



終了しました。ありがとうございました。
yomstore
  古本屋(仮)による古本、齋藤祐平による絵、福田サイノによる器の展示販売。

  会場:路地と人(http://rojitohito.exblog.jp/)

  会期:10/29(火)~11/4(月・祝)
  開場時間:平日…1922時、土日祝…1420 
 *作家在廊 11/2,3,4  


2013年10月29日火曜日

路地と人、搬入してきました。




 今日から始まる展示、yomstore@神保町「路地と人」の搬入をしてきました。神田古本祭りの賑わいを余所にひっそりと佇む木造アパートの2階で、古本と絵と器をつなぐ展示作業はガサゴソと深夜まで及びました。


息の合った作業をする画家の齋藤裕平さんと古本屋(仮)さん。 





その横で私はひたすら箱から器を出し、値札貼りをしておりました。  





棚には器と本と雑貨がリズミカルに並び、古本屋(仮)さんのキュートな感性が発揮されています。 








 持ち込んだ器はこの10倍くらいあり、棚に置ききれないので床に在庫掘り出しボックスを並べました。ぜひ掘り掘りしてみてください。  





yomstore 古本屋(仮)による古本、齋藤祐平による絵、福田サイノによる器の展示販売。
  会場:路地と人(http://rojitohito.exblog.jp/
  会期:10/29(火)~11/4(月・祝)
  開場時間:平日…1922時、土日祝…1420  
*作家在廊 11/2,3,4

無事終了しました。ありがとうございました。



2013年10月25日金曜日

ものづくりの修行のためのアトリエ建築


 moggy potteryのアトリエは、自分で建てました。なるべくお金をかけずに始めたいということもあったのですが、私はものづくりの経験がないので、その修行のためというのが一番の動機です。これまで私がやってきたことといえば、舞台、カフェ、CATVと、ものづくりとはまったく関係ないことばかり。これからひとりで陶芸をやっていくために、なにをどうしたらいいのか、それすらよくわからない。だからアトリエを自分の手で作るということは、いい訓練になると思ったのです。

 簡単ではありませんでした。私のところは傾斜地で、まず平地を作るために地面を掘る必要がありました。アトリエだけなら掘らずにウッドデッキのように浮かせてもいいのですが、蹴轆轤はコンクリートで固定するため、地面に接している必要があります。

 普通なら重機を入れて掘るのでしょうが、そんな大掛かりに始められるほど先の見通しは立っていませんでしたから、とりあえずスコップを手に掘り始めました。これが今思えばよかったのです。
 一人でアトリエを建てるという目標はさすがに達成できるかどうかわからず、不安に押しつぶされそうなときもありました。そんなとき、今、目の前の土をスコップで掘ることなら出来ると自分に言い聞かせ、前へ進んだのです。毎日少しずつ掘りながら、どんなアトリエにしようか、ろくろはどの辺に設置しようか、窓の位置はどうしようか、そんなことを一つ一つ具体的にイメージして決めていきました。


 DIYの知識もなかったので、本屋さんで「超基本DIY木工」とか「自分でわが家を作る本」「図解ツーバイフォー工法」などという本を買ってきて勉強しました。3坪までの建物なら建築申請が必要ないということから、アトリエの大きさは3坪と決定。簡単な設計図が出来た頃、地面を掘る作業もようやく終わりを迎えました。3ヶ月が経っていました。
 
 それから枕木で土留めをし、基礎をやり、タイルを敷き詰め、壁を立ち上げ、屋根をかけ、ドアを作り、窓を作り、ろくろを設置して、アトリエが完成したとき、私の中にはようやくものづくりをやっていける自信のようなものが生まれていました。一年半に及ぶアトリエ作りで、実際に陶芸を始めるのは遅くなってしまいましたが、一番大事なことを身につけたのです。作りたい物をイメージし、それを実現させるために、なにをどうすればいいのか。それがなんとなくわかってきたのです。 

 壁にぶつかったら乗り越えればいい。乗り越えられなければ他の道を探せばいい。出来ないと諦めるのではなく、自分に出来るやり方を見つければいい。それを実際に繰り返しながら、私はアトリエという自分の城と、ものづくりの基礎を手に入れたのです。